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2010/08/06

2010/8/6(月)西安PJ 9日目

8/6(Fri.)

こんにちは、g-Enesisの吉田泰輔です。本日は西安より、西安交通大学との共同研究プロジェクトについての報告を致します。今日は朝7時に集合し、Applied Materialという太陽光パネルの製造装置を作っている企業を訪問しました。その後西安交通大学にて、学生セッションを開催し、お互いの大学や研究を共有しました。

1. Applied Material訪問
最初に訪問したのは、半導体製造装置大手のApplied Materialの西安研究所です。Applied Materialは米国の会社ですが、1985年に中国に進出し、2006年に太陽光パネル製造装置の生産事業に参入し、2008年に同分野で世界トップシェアを獲得しました。中国においては、上海に本社があり、マーケティングやファイナンス等経営の中枢を担っています。北京の支社が政府との関係を取り持ち、西安が研究拠点として機能しています。西安は太陽光発電に適した気候で、地価も安く、周辺に多くの著名な大学があることから研究拠点として選ばれたようです。今回は、上海の大学を卒業し、英語がとても流暢な若いシニアマネージャーの方に社内を案内して頂きました。

同社の強みは、太陽光パネル製造装置に生かされる技術力で、世界最大の太陽光パネルを作る能力を持っています。一般的に使われる太陽光パネルは0.72平方メートル(0.6×1.2m)ですが、同社は5.7平方メートル(2.2×2.6m)のパネルを作るための製造装置を作ることが出来ます。太陽光パネルに関しては、サイズが大きいほど製造コスト、設置コストを削減できるため、技術力によって競争力を持つことが出来ています。



会議室でのプレゼンテーションだけではなく研究所の中も案内して頂きましたが、技術が強みの会社だけあって、社内での写真撮影は一切禁止されていました。技術の話が中心でしたが、そこで興味深い話をいくつか伺ったのでそれを紹介したいと思います。それは三つのトレードオフで、まず一つ目は、コンダクターに関するものです。太陽光パネルを見ると、そこにはいくつかのラインが入っていることが分かると思います。これは電気を通す役割を担うコンダクターで、これが大きいほど発電容量は大きくなります。一方で、コンダクターがある部分には太陽光が当たらないため、コンダクターが大きければ大きいほど発電効率は低下してしまうことになります。しかしこのトレードオフに対して同社は解決策を考えだしており、現在は同じ場所に重ねてコンダクターを設置するための研究を進めています。同じ場所に重ねてコンダクターを設置すれば、発電容量を保ったまま、太陽光の当たる面積を大きくすることが可能になります。

二つ目のトレードオフは、シリコンに関するものです。シリコンは太陽光の主要部品で、高いコストがかかる部分です。したがってシリコンを薄くすれば、低コストを実現することが出来ます。しかし、薄くすれば薄くするほど、強度は低下し壊れやすくなってしまいます。三つ目のトレードオフは、太陽光パネルの設置場所に関するものです。皆さんのイメージに反するかも知れませんが、温度が高いところでは太陽光パネルの発電効率は低下します。一方で、太陽光が強ければ、太陽光パネルの発電量は向上します。しかし一般的に、太陽光が強ければ強いほど温度は高くなってしまうため、発電効率と発電量を両立できる最適な設置場所を考えなければなりません。

最後に、太陽光パネルは自然エネルギーであることから、その土地の気候等の条件に大きく制約を受けるそうです。例えば、西安で研究開発され、最適であると考えられる太陽光パネルでも、その他の場所では最適にならないというケースも多々見られるようです。このような細かい技術の話は、来年から化学メーカーで働く自分にとって非常に興味深いもので、勉強になりました。ちなみに、同社研究所の外においてあった太陽光パネルはかなり汚れていましたが、彼らの測定によると、パネルの汚れは発電にほとんど影響を与えないようです。このような面白い話を聞くことが出来るのも、企業を実際に訪問したからであり、今回は非常に貴重な機会だったと思います。



Applied_Material外観


Applied_Material正門前での集合写真

2. 新領域創成科学研究科の紹介
新領域創成科学研究科については、本プロジェクトのリーダーである三上が学生に対してプレゼンテーションを行ないました。同研究科が拠点としている柏キャンパス、環境に配慮した作りになっている環境棟、アドミッションについての説明がありました。特に環境棟の換気システムは、北京で訪問した精華大学の建築省エネ研究センターの建物に類似しており、多くの学生の興味を引いていました。また、アドミッションに関する部分で、東京大学の国際化への取り組み(交換留学システム等)について議論になりました。“国際的”というのは、新領域創成科学研究科のコンセプトの一つではありますが、日本語の壁等の要因で、中国の学生にとって入学のハードルはまだまだ高いように感じられました。


三上日本代表によるプレゼンテーション


3. 風力発電についての発表
次に、NCGCのNew Energy Research Centerに所属しているZhang Linさんから、風力発電についてのプレゼンテーションがありました。プレゼンテーションの内容は、(1)世界の風力発電の状況(2)中国の風力発電の状況(3)風力発電の技術(4)今後の見通しについてでした。

中国では、政府の補助等もあり2004年前後から風力発電の容量は伸び続け、今後も急速に増加することが予想されています。特に、中国の北東、北西、北の地域(Three noastal Area)は風が強いため、10MW級の風力発電所が今後も多く建設される見通しです。ただ、それらの地域は都市部と距離があるということもあり、電力網の未整備や電力供給の不安定さ等が今後の課題として挙げられていました。彼女が所属しているNCGCでは、主に中国北西部において、風量及び風力発電量の予測やモニタリングに関する研究を行っており、それらの問題の解決に取り組んでいるそうです。


風力発電の技術に関して、これまで風力発電プラントのサイズは拡大し続け、それと同時に発電容量も増加して来ました。最近20年で、プラントのサイズ及び発電容量は約100倍にもなったそうです。現在の世界最大の風力発電プラントはドイツ製で、直径126メートル、発電容量は5MWにもなるそうです。また、風力発電には第1、第2、第3世代のプラントが存在していますが、コスト等の問題もあり、今なお最も良く建設されるのは第1世代のもののようです。今後の風力発電の見通しに関して、金融危機による短期的な影響はむしろ風力発電の普及の後押しになるものの、長期的にはコストの上昇が見込まれそれが普及にも影響しうるという評価がされていました。

4. 中国の建築についての発表
最後に、西安交通大学の学生が、中国の伝統的建築物についてプレゼンテーションをしてくれました。プレゼンテーションでは、紫禁城や恭王府等有名なものから、様々な地域の伝統的なものまで、多くの建築物の写真が登場しました。ただ、中国ではほとんどの伝統的建築物が木で出来ており、戦火によって失われてしまうものも多いようです。

より具体的に、中国の伝統的建築物の特徴として、多くの種類がある屋根、建築物の対称性、階級による差異が挙げられていました。また、宗教や地域によっても、建築物の特徴は大きく異なるようです。北京では多くの伝統的建築物を見てきましたが、それらの特徴をここでレビューしてもらったお陰で、中国の建築物に対する理解が深まりました。例えば、紫禁城は赤色や黄色が多用されていますが、これは富や権力の象徴とされており、高い階級の者しか使用することは出来ません。また、中国では9や5といった数字が大事にされており、建築で多用されています。9は最も大きな数字として、5は真ん中の数字として昔から大切にされているそうです。


学生セッション後の集合写真

最後にレクリエーションとして、アジア最大の規模を誇る大雁塔音楽噴水ショーを見に行きました。大雁塔は、経典や仏像が保存されている場所で、中国の伝統的建築物として有名です。近くには大きな広場がいくつもあって、そこから大量の水が数十分間音楽に合わせて噴射されます。子供たちが噴水の中に入って遊んでいるのを見て、僕たちも我慢できなくなって広場に飛び出しました。当然全身びしょ濡れになり、皆の電子機器が危機に晒される結果になりました(笑)このイベントは毎日開催されているようで、西安が中国で最も幸福な街だと呼ばれる理由を象徴しているように感じられました。

長くなりましたが、以上が本日の報告になります。明日も朝8時半から予定が入っており、プロジェクトはかなりハードです。が、せっかくの機会なので充実した時間を過ごせるように努力します。明日は朝から卓球を楽しむ予定なので、それを楽しみに今日は寝ることにします。それではまた!

代投稿・編集:須山友貴(M1)

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